Alpine Gardening
アルパイン・ガーデニング

目次


 
 
 
 
 

 アルパイン・ガーデニングという言葉は聞き慣れないかも知れませんが、アルパインプラント(Alpine plant=高山植物)を育てる園芸のことです。アルパイン・プラントは、イギリスでは「無加温で栽培できる野生植物」と定義されていますから、つまりは日本でも盛んな山草栽培と同義語なのですが、イギリスを中心にして発展してきたアルパイン・ガーデニングという園芸文化には、日本の山草園芸とはやや異なる側面があるように感じられます。

 日本では山草栽培というと、やや特殊な趣味・マニアックな園芸家の趣味といういうイメージがありますが、日本よりも山草栽培が盛んなイギリスなどでは、園芸文化の一分野として確立していて、若者からお年寄りまで、非常に多くの人たちが山草栽培を楽しんでいます。いま日本でブームになっているイングリッシュガーデンに、山草は欠かせない素材です。宿根草を主体にしたコテージガーデンやカントリーガーデンなどには、実に多くの山草が取り入れられています。

 有名なチェルシー・フラワーショウをはじめ、毎年各地で開かれるフラワーショウには、海外からの新導入種や、新しく育種されたアルパインプラントもたくさん展示されます。アルパイン・ガーデニングが園芸の一分野として確立している背景には、多くの熱心な園芸家たちの活動があり、選抜育種や原種の交配による優良品種が多数作出されています。種子からの繁殖させる実生増殖の歴史が長いので、丈夫な性質を持つようになった山草も多く、一般家庭の庭でも多くの種類が、特に山草と意識されずに植えられています。
 熱心な山草園芸家は日本よりも圧倒的に多いのに、アルパイン・ガーデニングが特殊な趣味ではなく、いわば開かれた趣味として社会的に受け入れられていることは、こうした一般家庭の庭にさりげなく植えられた山草たちが物語っているように思えます。

 アルパイン・ガーデニングは、裾が広く、一般の園芸との垣根もなく、誰もが楽しめる園芸なのです。

 日本と同じくトップクラスの山草園芸家は、栽培増殖が困難な珍しい植物をターゲットにしていますが、専門知識は高度で、広く世界中の山草を視野に入れています。訳もなく日本産の山草にこだわり、日本産山草の栽培に集中する傾向がある日本の山草園芸とは、やはり違いが見られます。トップクラスの人々を含めて、山草のある庭を風景として楽しもうとする気持ちが強いのも、イギリス流のアルパイン・ガーデニングなのです。

 アルムは、日本の山草園芸とはひと味違うイギリス的なアルパイン・ガーデニングを普及させたいと考えています。

 

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プラントハンター <花を求めた巡礼者たち>
 
 
 
 
 
 
 
 

 氷河期に厚い氷床に覆われた英国は、日本に較べると桁違いに自生植物の種類が少ない国です。その英国が今日の園芸大国なった背景には、世界の辺境へ命がけで植物を求めて旅したプラントハンターたちの活躍があります。
 Plants Huntingの歴史は、イギリスの園芸文化史の一部として評価され、古い時代から活躍した個々のプラントハンターの業績もまた高く評価されています。今世紀初頭に導入された植物が、学名にプラントハンターの頭文字と採集番号を付け加えた識別名で保存増殖されていて、そうしたオリジンは今でも各地のナーセリーで簡単に入手できます。
 プラントハンターたちのフィールドノートは公開されており、古い時代の紀行は名著として今も刊行され、広く読まれています。分類的には同種でも個体識別名(採集番号)が異なる植物が、長年に渡って保存され、そうした植物のルーツ、導入の背景も容易に知ることができる園芸文化には、人と植物との関わりで生まれたロマンを大切に語り継ぐ姿勢が、しっかりと感じられます。
 日本では怪しげな和名をつけた中国産の山取り植物が、学名も産地も不明のまま、いつの間にか大量に売られていたりします。国内の山からの園芸目的の大量盗掘も問題になっています。この現状では、日本には園芸文化も園芸モラルも園芸ロマンも育ちません。

 プラントハンターたちがもたらした種子や苗は、多くの園芸家によって増殖され、英国から世界各地に普及しました。英国では「市販されているものは生産品」という大前提があって、山草栽培は、いわば市民権を得た状態です。モラルが定着しているために特に規制などもありません。
 栽培技術も進んでいて、種子からの繁殖が盛んに行われ、山草会などの“Seed Bank”システムでは、毎年4,000〜6,000種の種子を一括して管理して会員に配布しています。種子は各会員の栽培株から採取されたものが大部分で、Seed Bankシステムは、そのまま遺伝子保存のためのネットワークシステムになっています。


参考文献
  • 「花と木の文化史」中尾佐助著・岩波新書(世界の人々の、植物との関わりの歴史について知ることができます)
  • 「プラントハンター」白幡洋三郎著・講談社選書メチエ(英国におけるプラントハンティングの歴史と、日本との関わりについても語られている)
  • Plant Hunting on the Edge of the World, by F. Kingdon Wardhe
  • Valley of Flowers, by F. S. Smythe
  • >Mystery Rivers of Tibet, F. Kingdon Ward
  • A Naturalist in Westen China, E. H. Wilson
  • The Land of the Blue Poppy, F. Kingdom Ward
  • The Dolomites, by R. Farrer
  • Rainbow Bridge, by R. Farrer
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ナーセリーとは?
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 最近は、英国の園芸が盛んに紹介されてナーセリー・Nurseryという言葉も広く知られるようになってきましたが、ナーセリーと単なる生産者との違いについては、あまり理解されていません。公共的な植物園などで、補植用の植物を生産保存している裏方の部門もナーセリーと呼ばれますが、ここで説明するのはコマーシャル(商業)ナーセリーのことです。

 イギリスではナーセリーマンは生産者であると同時に民間レベルの植物学者であり、種の保存のための民間制度・ナショナルコレクションの重要な担い手としても活動しているところも多く、ナーセリーの社会的地位も高いといえます。ナーセリーはそれぞれ個性的で、特定の属の植物を専門的に生産している所や、南アフリカの植物のみ、あるいはマダガスカルの植物のみを生産していたり、球根植物のみを生産する所もあります。もちろん山草ナーセリーの数も非常に多く、プリムラが得意な所や、サキシフラガがメインの所など、それぞれが個性を競っています。
 ナーセリーで販売される植物は責任生産(自家生産)が原則です。責任生産だからこそ、植物について専門的な知識を提供できるのです。したがって、ナーセリーでの販売が山草流通の基本となっている英国では、卸販売の複雑な流通システムがありません。大都市周辺のガーデンセンター向けへの卸はあるものの、それは一般向けの種類が大半です。

 分業化と卸販売がないことによる買い手の不便さは、さまざまな情報網(統一された山草会もその一つ)でフォローされています。王立園芸協会・RHS発行のプラントファインダー(書籍版とCDロム版があり、毎年更新)には、英国のすべてのナーセリーの扱い植物がデータ化されています。ナーセリーは田舎に点在していますが、趣味の園芸家は、自ら出向いたり、通販利用でナーセリーから直接購入するのが普通で、複雑な流通形態は必要がありません。

 日本では、卸販売が大きな比重を占め、流通は大卸、中卸、小卸、販売店と複雑化しています。分業化がないため、多くの種類を揃える必要があり、そこに山取苗を含む仕入が発生します。一部の野生ランなどのように、栽培困難で増殖率が低いものほど仕入に頼るわけで、この流通形態は、消費者には便利ですが、盗掘植物も流通可能になることで自然保護上の問題があります。

 盗掘植物も扱う業者から直接購入するのは、マニアックな趣味家と同業者のみで、いわば身内のみの世界が成立します。英国のように広く一般の目が届きません。
 流通が複雑なために、高度な栽培技術と知識を必要とする絶滅危急種までが卸ルートに乗って販売されます。誰が育てたのか分からない植物を、都会の販売店が売り、充分な栽培知識の提供がないために、あたかも一年草のごとく消費されてしまうのが、日本の山草栽培です。

 アルムは、日本では稀な高山植物ナーセリーとして、流通形態を含めた山草園芸のあり方を、欧米的に変革したいと思っています。日本では小さな存在ですが、販売植物には責任生産を示すアルムのロゴ入りのラベルを付け、毎年発行のカタログには「当園の植物には山取苗は一切ありません」と明記しています。こんな記載を日本中で行うならば、社会問題化している野生植物の盗掘に歯止めがかかるはずです。
 アルムのページからリンクをたどると、欧米のナーセリーのページを見つけられます。

 
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国内の山草会

 欧米では、アルパインガーデニングを文化として定着させるために、全国統一の山草会が重要な役割を担っていますが、日本では、残念ながら全国統一の組織は、まだ発展段階です。全国に数多くの山草会があるようですが、情報交換のネットも不充分な現状です。その中で以下の山草会は、栽培対象の植物を広く世界に求め、会員のレベルも高く、各地の人たちが加入しているネットワーク型の構成で、種子の配布もあり、ビギナーにも向く、これから期待できる会です。

  • 北方山草会 札幌市南区藤野6条4丁目29-5 松井 洋方 Tel/Fax 011-592-6607
  • 北海道山草趣味の会 旭川市東旭川北1条6丁目6-12 村田悠治方 Tel 0166-36-3253
  • 東京山草会 (事務局)東京都世田谷区祖師谷5−32−30 原野谷朋司方 Tel 03−3482−2015
  • 全日本山草会連絡会 こちらは山草会が加盟する会で、現在は全国各地の60以上の山草会が参加しています。自然保護と両立する山草栽培とそのモラルを確立するために活動しています。毎年、各地で大会を開いています。
    北海道では、北方山草会、北海道山草会、北海道山草趣味の会、十勝山草会の四団体が加盟しています。
    (事務局)東京都世田谷代沢3−19−22 石川 律方 Tel/Fax 03-3412-2664

海外の山草会と園芸団体リンク


 英国を中心とした園芸先進国では、山草会の組織、システムも確立されています。高名な英国のAGS(Alpine Garden Society)は、全世界に会員約1万人がいる世界最大の組織で、ほぼヨーロッパ全土に支部があります。スコットランドにはThe Scottish Rock Garden Club、北米にはNorth American RockGarden Society会員約6千人、チェコ、カナダ、ニュージーランドなどにも全国組織の会があります。それぞれにSeed Bankがあり、会報や多くの出版物を出していて、新種の紹介や栽培方法の情報交換、専門的、学問的情報も提供しています。これらの組織は4年に1度、世界高山植物会議を開催し情報交換を行っており、当然ながら自然とは一線を画した栽培のあり方、モラルの普及も国際的なものとなっています。


Alpine Garden Society アルパイン・ガーデン・ソサイエティー 。世界最大の英国の山草会。

Scottish Rock Garden Clubスコティッシュ・ロックガーデン・クラブ

North American Rock Garden Society (NARGS). カナダと合衆国をカバー。

The Rock Garden Club, Prague チェコの山草会。世界的にもハイレベルの会。

New Zealand Alpine Garden Society (INC) ニュージーランドの山草会。

Alpine Garden Club of British ColumbiaカナダBCの山草会。

The Alpine Garden. Rock Gardening On The Net The East Lancashire Group'sのウェッブサイト

Royal Horticultural Society. 英国王立園芸協会

Royal Botanic Gardens, Kew. 英国王立キューガーデン

Cheshire and Wirrel Alpine Garden Society.

Alpine and Rock Garden Resource page.

Alpine Links page.

Flora of China Home Page.

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最終更新日 : 11/11/03.